楽して痩せられる、と聞けば買わずにいられないのが女心である。 このスリッパは、硬い素材と柔らかい素材の2層のソールが脚を内側に寄せることによってO脚対策になり、脚の引き締めにも効果的。さらには、土踏まずの部分を盛り上げ、かかと部分はくぼみをつけることで、長時間立ち仕事をしていても疲れにくくなるそうである。 ほんとにそうなら、1554円は安い! と言うより、今まで少しでも痩せるためにエステに行ったりジムに行ったり、またいろんな器具やサプリを買ってみたり、結構な金を使ってきた。これで脚が引き締まっちゃったりしたら、今まで使った金と努力はいったい何だったんだと、むしろ腹が立つんじゃなかろうか。 最も簡単で確実なダイエットはもちろん、食べないことだろう。でも、食べたい。食欲という最大の煩悩を断ち切れるほど、私は立派な人間ではない。 私は幸いにしてチョコレートとかケーキとか、アイスクリームなどの甘類はあまり好きではない。酒もほとんど飲まない。だから、甘いものとアルコールを我慢するつらさは全然感じないのだが、根が貧乏人なもので炭水化物が大好きである。そして、炭水化物は間違いなく太る! それでも食うなら食ったぶんエネルギーに換えれば済むことなのだが、運動するのは大嫌いだ。できればベッドかソファーの上で一生をおくりたい。かつて半年間ほど健康維持と肩こり解消を兼ねてジムに通ったこともあるが、正直言って苦痛以外の何ものでもなかった。 まぁ40歳もとうに過ぎると、地球の引力には逆らえず、脂肪は年をとるほどに下へ下へと向かっていく。痩せるというよりは脂肪を落とす、体重なんて減らなくてもいいから見苦しい体型になるのだけは避けたいという、あがきに似た気持ちである。 「べつに無理して痩せなくてもいいのに……」 そんなふうに言ってくれちゃう男もいるが、女にとっての脂肪は男にとっての髪の毛と同じである。もし、1554円のスリッパを毎日履くだけで髪の毛が5000本生えてきますよ、と言われたら買わないか? てなもんで、食べたい、運動はしたくない、でも脂肪は減らしたいという大きな矛盾点を抱えての、あくなきチャレンジャーの私である。 私自身がバブルだった頃は、それこそ金に任せてエステ通いをしていた。 発汗作用のあるジェルを塗ったくった上から、さらしでぎゅうぎゅうに巻いて締め付けるというのもやった。円状の機械で体じゅうをマッサージして、セルライトを落とすというのも。あとは、スチームバスとマッサージの繰り返しで脂肪を落としたり、痩せるツボに鍼を打ってみたり。 それ以外でも、宿便をなくせば体重が減るというので、怪しげなパウダーを牛乳に混ぜて飲んだり、体内の油分を排出するサプリメントを飲んだり,低カロリー食を試してみたり。 結局どれひとつも大した効果はもたらさなかった。あの労力と金を正しい方向に活用させていれば、もう一つくらい会社が作れていたんじゃないかと、今さらながら思う。 それでもダイエットはやめられない。女は見た目じゃないわ、と思いながらも楽して痩せられまっせという言葉に、ついふらふらと財布を開いてしまう。 私の周りでも、痩せたい脂肪を減らしたいとあがいている年増女がたくさんいるのだが、切実にそう思って行動している人ほど実は太っていなかったりする。太っていないから、また昔はきれいだったんだろうなぁという面影がまだ残ってるからこそ、1センチの脂肪や1キロの体重が許せないみたいで、その節制ぶりは見ている側には悲痛な感じを与えてしまう。 今朝はヨーグルトだけだった、ダイエット中だから油ものは食べなかった、反対に、夜おせんべいを食べちゃって自己嫌悪に陥った……などといちいち報告してくるのだ。それで1キロ増えた減ったで、また一喜一憂する。 たぶんエラいねぇとか、大丈夫だよとか言ってほしいんだろうけど、私は楽に痩せられないのならこのままでもいいや、と思っているようないい加減な人間だから、あまり力になってあげることもできない。 ダイエットは密かにやる方が誰にも迷惑をかけず、また失敗したときの言い訳も要らずにいいんじゃないかと、そういう人を見るたびに思ってしまう。と言うよりも、我慢を重ねるだけのダイエットは、見ている側にも悲壮感が伝染して結構キツいものがある。 で、そういう道を選ばず、何もかも楽ちんでいきたい私が、この「コンフォートエステスリッパ」を履き始めて約3週間。 ちょっとは効果が出たのかと思いきや、まったく変化ナシ。まぁさほど期待はしていなかったからガッカリもしていないのだけど、2層のツールで普通のスリッパよりもヒール部分が高くなり、そのせいで二度ほど足をひねった。 あくなきチャレンジャーの私は、悲壮感は漂わせていないものの、時に外科医のお世話になる覚悟を必要とする。 |