「金に糸目はつけまへん!」
及川、そう言いきれる物はシャンプーくらいである。どんなに高くても、いいと言われれば買ってしまう。
今使っているブラック・ケア・シャンプーも、600ml入りで5300円。ドラッグストアで売っているようなシャンプーと比べれば、かなり高値である。
ほかは値段の高い安いはさほど気にしない。100円ショップ大好きだし、普段着はほとんどユニクロ。靴だけは比較的高い物を買うが、これは私の足は甲が低くて細長い、さらには指がめちゃくちゃ長いという特殊な形をしているため、合う靴が少ないからである。それに靴だけは値段に比例して、足にいい物はやはり高いのだ。
でも、なぜシャンプーにそんなにこだわるようになったかと言えば、理由は簡単。二度も円形脱毛症をやってしまったからである。
さらに私は、ストレスが溜まってくると頭皮に湿疹ができるので、そんなこんなで頭に関してはナーバスになっているのだ。
円形脱毛症はストレスの問題なので、シャンプー自体には関係がないと言う人もいるが、シャンプーも靴と同じく、やはりいい物(髪や頭皮に優しい成分が入っている物)は高いのである。安いケミカルな物を使い続けるよりはいいに決まっている。
それに、シャンプーくらい贅沢したってバチは当たらないだろうしさ。
と言うより、頭に関してそこまでナーバスになってしまうほど、円形脱毛症の思い出はつらいものだったのだ。
普通は1円玉サイズの小さなものが、自分ではわからない場所にある日こっそりできていて、美容院に行ったとき発見される。というのがパターンみたいなのだが、私の場合、まず一回目のときは500円玉サイズ二つに、消費税の分までくっ付いていた。
頭の後ろ側。なんか最近、髪を引っ張られる感じがするなーと思いつつ、頭をさわっているとき、どうしてここの部分はこんなにつるつるしているんだろうと合わせ鏡で見てみたら、しっかりハゲができていたさ。それもすごーくきれいな500円玉状態に、つるりん。
そのときは初めての出来事だったので、とにかくめちゃくちゃショックを受け、まずは皮膚科に行ってみた。
液体窒素、と言うのだろうか。冷たい液をハゲの部分にかける治療に何度か通ったのだが、別段代わり映えがなかった。
で、ある日。広告で「頭皮専門エステ」を見つけ、そこに行ってみた。
週一回くらいの割で、頭皮を徹底的にきれいにし、鍼やイオンマッサージやらで刺激をする、というようなメニューだったと記憶している。
エステなので、もちろんチケット制。最初に何回分かの料金を払うシステムである。確か50万円くらいだった。その頃はわりとお金があったし、とにかくこのハゲを何とかしたいという気持ちが強かったので、すぐさま契約をした。
確か1年くらい通ったのではないかと思う。1年もあれば自然治癒してしまうから、そこのエステが効果的だったかどうかはわからない。でも、行くたびにエステティシャンが、
「あっ、うぶ毛がずいぶん生えてきましたね。もう安心ですよ」
「もっとひどい人は世の中にいっぱいいますからね。これくらいは何てことはないのですよ」
そういったことを言ってくれる。メンタル面でのケアが大きかったかと思う。
案外皮膚科の医者というのは、こういった「安心をさせる」ようなことを言わなくて、
「ちゃんと週一回通わないと、もっと悪くなってしまいますよ」
みたいな感じで、脅かすことが多い。治療に行くたびにずこーんと気持ちが落ち込むこともあった。
円形脱毛症は結局ストレスが原因なのである。そのストレスをこれ以上に増やさないために、医者も患者を気遣うべきなのである。放っておいても1年くらいで完治してしまうけど、その間の不安を癒しに病院に行くんだからさ。
しかし、二回目に円形脱毛症になったときは、一回目よりひどかった。500円玉どころではなく、お札を半分に折ったくらいの大きさのハゲが、同じく後頭部にぱかーんとできてしまった。どこかに消えてしまった500円が、ある日突然利息を生んで戻ってきたような状態である。
さらに、もっと悲惨だったのが、その頃は髪をショートにしていたということだ。髪はなかなか伸びてくれず、どうやったって隙間からハゲがチラチラ見えてしまう。
でも、二回目のときは病院にもエステにも行かずに、ずーっと帽子を被って、1年間ほどをしのいだ。その頃会っていた人たちは、私のことを「帽子好き」だと思ってくれていたようである。
そんな自分自身の経験からなのか、今まで髪を風になびかせていた人がいきなり帽子を被っていると、「おっ、円形脱毛症か?」とくだらない想像をしてしまう。
「大きなハゲができちゃってねー。だから、帽子を被ってんのよ」
あの頃は明るく笑って言い放っていたが、髪が生え揃うまでは結構つらかった。二度と円形脱毛症になるのはイヤだ。
というわけで、日頃の予防も肝心と、シャンプーにこだわるようになったわけである。
ブラック・ケア・シャンプーは、ホホバオイルや天然泥などの髪と頭皮にいい30種類以上の天然原料を使って、昔ながらの手作り製法だというふれこみどおり受け取っても、確かにいい。抜け毛が全然少なくなったし、頭皮の湿疹もあまりできなくなった。髪もつやつやである。
1本5300円は高いかもしれないが、毎日二度洗いをして2ヶ月以上持つし、リンスやトリートメントをあまり必要としないので、まぁ法外な値段ではないだろう。私はもう2年近く使い続けている。
だけど、たまにはちょっと浮気して、ほかのシャンプーも試したい気持ちに駆られる。
しかし、売る側もそんな心理をわかってかどうか。もうなくなりそうだなと思う頃に必ず販売会社のおねえさんが、
「今回はキャンペーンでして…」
と電話してくるのだ。
通常は1本5300円なのであるが、
「シャンプー6本に、コンディショナー4本をお付けして、さらに今回は特別300ml入りのシャンプーもサービスさせてもらって、全部で税込み25200円! とってもお得ですよ〜」
安くなるのなら断る理由もないわけで、また、営業じょうずのおねえさんのにもそそのかされて、ついお買い上げ。
前回買った分がまだ2本も残っているのに、最近また6本届いた。まとめて買うと面倒くさくなくていいのだが、置き場所に困っている。 |