きっとほとんどの人が衝動的に買っていながら、衝動買いだと気付かないもの。それはペットである。
しかし、大型の犬を飼うためには条件的に限られてくるし、牛や羊はペットではなく家畜である。
なので、室内で買うための小型の犬と猫。ちょっと変わったところでは、ウサギやフェレット、ハムスター、カメなどなど。一人暮らしの女性がワンルームのマンションでも飼えるような愛玩動物が、「ああ可愛い!」と思った途端に財布を開いてしまう対象となる。
何の気なしに立ち寄ったペットショップ。♪どうするぅアイフル〜じゃないけれど、ガラスケースの中からじっーと見つめられ思わず、
「すみませんっ。ちょっと抱いてみてもいいですか?」
ガラスケースから出したら最後。犬猫にぎゅっと抱きつかれ、どこにあったのか母性本能がめらめらと沸き立ち、
「クレジット・カードは使えますかっ?」
結局、連れて帰ることに。
事実、うちの『レンゲちゃん』もそういうふうにアメックスの一括払いで買われ、ケーキの箱に入れられてうちに来た。
それまでもうちには『サジ』という名前のアメリカン・ショートヘヤーがいたのだが、知人の紹介でタダで貰われてきた子である。
これがとてつもなく寂しがり屋と言うか、ほとんどストーカーまがいに一日中飼い主のあとをつきまとい、かまってやらないとストレスでそこらじゅうにオシッコをしまくるという、とんでもない猫。
「二匹になれば、そういう癖はなくなるわよ」
という友人の言葉を信じての購入でもあったのだが、サジのオシッコ癖は治らないどころか、よけいに手が掛かるのをもう一匹背負う羽目に。
サジのようなストーカータイプではなく、どっちかと言うとマイペース。自分の好きなときにだけ飼い主のそばに寄ってきて、あとはどれだけこっちが呼ぼうが見向きもしない。昼間はずっと自分のお気に入りの場所で寝こけている。
このお気に入りの場所というのが約1ヶ月サイクルで換わっていて、今現在は私の仕事用の椅子である。
そして、自分がいったん気に入れば、その場所を絶対に譲らない。仕事をするために無理矢理退けると、私が次に立ち上がるまでじーっとそこで待っている。コーヒーを淹れるため、トイレに行くために立った瞬間、すかさずその場所を占拠する。そのしつこさと言ったらもう、チェチェン野戦軍も敵わないくらいである。
でも、そんなことは別に大したことではない。
この猫の最大の問題、さらに稀なる特徴は「走りゲロ」にある。
猫は自分の体を舐めてきれいにする。そのため胃の中に毛玉が溜まり、時々ゲロを吐いて毛玉を出す。
もちろん、それは猫を飼っている限りは仕方がないことなのだが、レンゲの場合、そのゲロが一度や二度で済まず、一晩中でも吐きまくる。
「あっ! また吐いてる!」
幼少の際、ゲロ時にそう大きな声で言われたことがトラウマになっているのか、ゲロ・イコール「怒られる」という発想になってしまっているみたいで、だから、人が見ていなくても常に逃げの状態で走りながら吐く。
朝起きると、家中がゲロまみれである。テーブルの上にも電話機にも、また絨毯にも何度も吐かれた。一度などソファーの上に思いっきり吐いていたのに気付かず、そのまま座ってしまったことがある。
清々しい気分で目覚め、さぁ今日は頑張って仕事をしようとパソコンを見たらゲロまみれ。前向きな気持ちは一気に萎え、一日が終わってしまう。
それでもまだすぐに気付いただけましで、時には気付かず放置することも。たまに気張って隅々まで掃除をしているとき、カーテンに隠れたとんでもない隙間にカピカピになったゲロを見つけてしまうこともある。
また、レンゲは尻にウンコをぶらさげたまま家中を駆けめぐる「走りウンコ」の名人でもある。これも同じく、ある日やっぱりとんでもない場所にカリントウ状態になったウンコを見つけることが。
うちの弟は四十過ぎた今も、ズボンを脱がないとウンコができないという癖があり、それは外出時のトイレでもそうで、カバンを引っ掛けるフックに脱いだズボンを掛けて用を足すそうである。
人生いろいろ、ウンコの仕方もいろいろといったことが、猫にも当てはまるのだろうか。
ま、レンゲのゲロの次の日は、雑巾片手に家中を掃除するきっかけにはなっている。
けれど、いくら衝動的に買ってしまったものとは言え、猫だって命あるものの一つである。やはり飼った以上は最後まで面倒を見て当然である。
と言うより、最後まで面倒を見る覚悟もないのなら、ペットなんて飼うべきではない。
アイフルのCMの影響でチワワがやたら売れているそうだが、売れている分だけ捨てられ保健所で薬殺されているチワワも増えていると聞いた。
ガキにせがまれ何の考えもなしに買い、子犬や子猫の時期だけ可愛がって大きくなったら捨ててしまうようなバカどもに、いくら商売だからと言ってペットショップも安易に動物を売るべきではない。
私は、どんな動物にせよ「飼う側」にも審査を課すべきだと思っている。家族構成や収入、家の間取り、ペットの所持歴など厳しい規定を設けて、それに合格した者だけが晴れてペットを所持できるようにすればいい。
そういうふうにすれば、捨て犬や捨て猫の数が今よりはるかに減るはずだ。
動物を飼うことは手が掛かるし、もちろん金もかかる。しかし、その分愛情も湧くし、物言わぬ相手でも与えてくれるものは計り知れない。
自分の都合だけで可愛がりたいのなら、ロボットやぬいぐるみで我慢するしかない。または、近所の野良猫を眺めて暮らすかだ。
逆に、異常なまでに可愛がる人たち。スーパーマーケットやレストランに平然と犬猫を連れて来て、
「うちのミーちゃんは人間と同じなんだからね!」
などとほざいているのもいるが、こういうヤツらには単純に罰金を課してほしい。
人は人。犬猫は犬猫。自覚と責任、そして覚悟があればこその関係でありたいもんだ。 |