その人が金持ちかそうじゃないかは、時計と靴を見ればわかるんだってさ。
カジュアルな洋服を着て、あまり高くないような布製のバッグを持っていても、手首でキラリと光るローレックス、足もとを飾るプラダの靴を見れば、
「おっ、こいつはイケる!」
と思うらしい。確かスッチーから聞いた話だったと記憶しているが。
そうなると、及川なんてのはまさに貧乏人の代名詞。靴はまだしも、なんで時間を確認するだけの物に高い金を払わなきゃいかんのだ、と思っているからさ。
靴はそれなりに高い物を買っている。これは以前にも書いたが、私の足が甲が低くて幅が狭い、かかとがぺったんこ、そして指がすごく長いという、おおよそ日本人らしくない形をしているからである。他の部分は至ってメイド・イン・ジャパンなのに、なぜか足の形だけがよその国からの遺伝子を引きずってきたようなのである。
かと言って、ヨーロッパやアメリカ製の靴ならぴったり合うのかと言えば、そうでもない。何度か買って試してみたが、必ずかかとが血だらけになってしまう。これはたぶん欧米人のように、足首の後ろ側がきゅっと締まっていないからだと思う。
てな訳で、とにかく靴選びが大変。合う靴があれば、多少の金額は気にせずに買っていた。だけど、せいぜい5万円くらいまで。それ以上高いものは、無視してかかることにしている。
ものすごーくお高い靴をテレビや雑誌で見掛けることがあるが、いったい何が違うんだろう。ブランドとかデザインとか、そういう理由なのだろうか。そして、お高い靴ほど見るからに履きづらそうなのだ。
5万円も出せば、革も良く履きやすい靴が充分に見つかる。そういう実用性を選んでしまうこと自体、貧乏人の証拠なのかもしれない。
時計の話に戻るが、特に男性で時計集めが趣味という人がよくいる。コレクションしてなくても、時計がすごく好きという人は結構多い。
「これ、ブルガリの新作!」
先日も知人がそう言って、みんなに見せていた。そのときはたまたま誰かが、
「その時計、可愛いね。どこの?」
と訊いたことがきっかけだったのだが、
「よくぞ訊いてくれました!」
って感じだったもんなー。やっぱり自分の身に付けている物を褒められたときは嬉しいからね。時計には決して金をかけない及川であるが、私だってたまには、
「その時計、どこの?」
と訊かれることがある。やっぱり嬉しい。
だけど私の場合は、とてもおしゃれな時計だからとか有名ブランドだからとかの理由ではなくて、している時計のほとんどがめちゃくちゃ派手だからである。
「いったいどこで、そんな物が売ってるの?」
むしろそういった疑問だと思う。
安全ピンがジャラジャラ付いた時計。これはデザイナーの知人がオリジナルで作っているもの。ガラスを散りばめた鉄製の時計。これは近所のブティックで買った。あとは、全面に花の模様が描かれたものや文字盤の文字がやたらデカいものや、とにかくオモチャみたいなものをいっぱい持っている。相手が一瞬にして目に付くようなものばかりだ。
さらにそれら全部、見事に安物。もし金に困って質屋に持っていったなら、質屋のオヤジに大笑いされるか罵倒されるかの代物ばかりである。
私には妙な癖があって、右手に指輪や時計、ブレスレットなどをしていると気持ちがどうにも落ち着かない。だから、装飾品の類は左手にしか付けないのだけれど、それも出掛けるときだけ。家では一切しない。
そしてさらに、もし出掛ける先で何らかの作業、たとえば文字を書いたり料理をしたり掃除をしたりする場合、それらを全部はずさなければできないのである。装飾品を付けたままやっていると、神経がすべてそっちの方に行ってしまうのだ。ネックレスや髪留めの類でもダメである。
もっと言えば、ブレスレットもいくつかは持っているのだが、手首でぶらぶらして皮膚をさわる感じが何とも言えず気になる。だから、ついブレスレットをさわってしまい、そのせいですぐ壊れてしまう。
そのうちブレスレットを買うことを諦めてしまった。どうせまたすぐに壊しちゃうだろうと思うからだ。だけど、ブレスレット自体はすごく好きなのである。していることで、手首が細くて綺麗に見えるからなのかもしれない。きっと私だけの思い込みだとはわかってるんだけどさ。
で、つまり私にとっては、時計はブレスレットの役割を兼ねるものなのである。だから、派手なものばかり好んで買う。
もともと「時計を買っている」という認識がないし、時計が「一生モノ」だなんて思っていないから、安物で充分なのである。
時には、電池が切れたままの時計をそのまましていき、時間はケータイで見ている。こうなると、時計の役割もくそもあったもんじゃない。
高い時計をステイタスの証しのように身に付ける人がいる。私の「アクセサリー感覚」と似たようなものなのだろうか。
しかし、ダイヤモンドの付いたローレックスをこれみよがしに身に付けて鼻高々でいる男(女もそうだ)って、なんか成金ぽくってイヤなんだよなぁ。まぁ、及川のひがみなんだけどさ。
ああそう言えば、このスウォッチ。
去年の暮れに渋谷で見掛けて衝動買いしたものなんだけど、長袖のセーターやコートを着るこの季節。プラスチック部分のデコボコがとにかく邪魔になって邪魔になって邪魔になって、結局二・三度しただけでそのまま放っぽってある。シーズンちゅーもんを考慮に入れず買ったのが失敗であった。
夏まで置いておくだな。
|