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暮らしに役立つおばあちゃんの知恵袋

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著名人が語るおばあちゃんの知恵袋

第15回 及川 眠子さん

書かれている文字以上のものを感じさせ、
想像を膨らませる手助けをする。
これが詞です。


 


■人からは、
 最後の職業作家って言われるんですよ。


 「いらっしゃい」と玄関先までわざわざ迎えてくれたのは、作詞家の及川眠子さんご本人と、愛猫のサジちゃん。
今回は閑静な住宅街にある、ご自宅に招いていただいてお話を伺うことが出来た。

「どうぞ」と案内されたのはCDと本が壁一面にきれいに並べられた一室。ここから多く名曲、ヒット曲が生まれたのだ。そう思うと、緊張と興奮が一気に高まってきた。

 

もともと及川眠子という作詞家には興味もあり(実はファンでもあったので)室内をしばらくキョロキョロとしてしまった。

それを見透かすかのように及川さんは棚から1枚のCDを取り出し、「音楽と車はアメリカのが好きなんです」と話し出してくれた。
及川さんお気に入りのトム・ウエイツを聞きながらインタビューを始めさせていただいた。

日本のアーティストで、お好きな方はいらっしゃいますか。
「昔からムーンライダースのファン。最近の若手アーティストでは山崎まさよしやコブクロなんかが好き。あと、ヴォーカリストとして絶対的な魅力を感じるのは、沢田研二と上田正樹かな。」
特に音楽のジャンルにこだわらず聴かれているようだ。

 ご存知の通り、及川眠子さんは作詞家。手掛けた楽曲は1000曲以上にもなり、代表曲にはレコード大賞を受賞したWinkの『愛が止まらない』や、『淋しい熱帯魚』、そしてアニメの新世紀エヴァンゲリオン主題歌『残酷な天使のテーゼ』など数多くある。特に「エヴァンゲリオン」は当時、偶然にも起こった凄惨な事件と重なるところもあり大きな社会現象になった伝説的な作品である。

及川さんの作詞のお仕事の依頼の8割が、曲先行(曲だけが出来ていてそれに詞を付けるもの)。中にはいわゆる“おまかせ”でコンセプトから歌詞の内容まで及川さんがイメージを膨らませて作品にするものもある。

「どんなものにも詞を付けることができます。私はいわゆる詩人やアーティストじゃないから、常に80点以上が書けて当たり前の世界。人からはよく最後の職業作家っていわれますよ。基本的にどんな仕事の依頼も断らない、エロ以外はね(笑い)」

つい最近では、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(テレビ朝日系、日曜日朝7時半から放送。ヒーローもの)の主題歌を手掛けている。 
「獣拳戦隊ゲキレンジャー」(テレビ朝日)

■「作詞の仕事は、すごく好き、
 というわけじゃないけど、とても楽なの。」


 足元に寄ってきたアメリカン・ショートヘヤーのサジちゃんの鼻先に手を出しながら、以前から気になっていたことを尋ねてみた。ペンネーム“及川眠子“の名前の由来である。

すると「”おいかわねこ“って読めないけど、一度聴いたら忘れないでしょ。」とアッサリと答えてくれた。なるほどその通りで”及川眠子”の文字はずっと頭のどこかに残っている。

「そこまで、文字に敏感になれる秘訣みたいなものは何か」と聞こうとしたが、それは謎解きの答えだけを見るような気がして止めて、何かヒントになりそうなものを探してみた。

目に入ったのは、やはりCDと本の多さ。そこで本の話題にふれると驚くべき事実を教えてくれた。なんと及川さんは月20冊以上も読み、多いときは年間300冊にもなるとサラリと言いのけた。やっぱり普通じゃない。

また読むことと同じくらい書くことも速いらしい。
「書くことは苦じゃないんです。作詞の仕事というものはすごく好きというわけじゃないけど、とても楽なの。」と平然とした顔で続ける。

「それに飽きっぽい性分で長編の小説は書く気にならない。2〜3時間で済むくらいの仕事がちょうどいい。」
まさに作詞は及川眠子の天職なのである。

そして詞についての及川さんの考え方を教えていただいた。

「歌詞は小説に比べたら圧倒的に説明が少なくなり、言葉も短い。その言葉の少なさゆえ、それがむしろ人の想像力を駆り立てる。文字(文面)以上のものを読み手に感じさせ、想像を膨らませる手助けをする。これが詞なの。」

と本当に分かりやすく、しかも”いとも簡単”に説明してくれた。いや、及川さんの語り口調が穏やかなので“いとも簡単”に思えただけかもしれない。簡単に言えても、それを実行することは並の人には無理だろう。

書くことが苦じゃないという及川さんのホームページで連載しているエッセイは既に300回以上にもなる。もっと驚かされるのは“及川眠子”という和やかな名前から想像も出来ないくらい内容がストレートで、ある意味「過激」なのである。

■ネコは人好き?!

及川さんの好きなもの、嫌いなものを尋ねてみた。

「苦手なものは飛行機。海外の仕事もあるので仕方ないけど、先日も離陸のとき思わず隣の知らない人の腕をギュッと掴んでしまいました。(笑い)」

特に最近はトルコでのレコーディングとプロモーション活動があり、昨年(平成18年)には3ヶ月以上も滞在していた。また5月からは故郷の和歌山でラジオ番組の仕事が始まる関係で、どうしても飛行機に乗る機会が増えているという。

そして好きなものは、いわずと知れた「買い物」。
これに関しては、エッセイ「衝動買い日記」で毎月連載していただいているので詳しい説明は控えさせていただくが、お買い上げの品は「家から飴まで」とかなり広範囲で興味深いものばかりである。ぜひご覧下さい。その中の「離煙パイプ」にあるとおりタバコもかなり好きらしい。

そんな愛煙家の及川さんは、やはり健康にはかなり気を遣っている。体も心も“凝り性“のようで、

「スパやマッサージはとことんやります。いいマッサージがあると噂を聞くと高速に乗ってでも通うほどです。」
と健康オタクをカミングアウト。

また仕事がらか、かなりの凝り具合で鍼は欠かせないらしい。特に「鍼灸師の方との会話が楽しみ」だと言う。
そうなのだ。お話を伺っていた間ずっと感じていたことなのだが、及川眠子という人は「人と話すのが好き」なようだ。
『人の話しが好きであり、その人の持っている知識、知恵などが好き』なのだ。この辺りに作詞家及川眠子の秘密が隠されているのかもしれない。
長時間のインタビュー中にもそばに寄り添っていた猫のサジちゃんのように、どうやら“ネコ“は人が好きなようだ。

今後の及川さんの活躍を心から期待し、また一読者として楽しいエッセイを長く連載していただきたいと心の底から願う。

 (第15回 及川眠子さん インタビュー 終わり)


及川眠子プロフィール 
(公式ホームページより)

水瓶座 血液型B型 和歌山県出身
今まで職を転々と変え、転職歴は12回。とりあえず今のところは作詞家に収まってはいるが、この先不明。 趣味は浪費。特技は安物買い。また、音楽業界きっての「ジャーナリストおたく」でもある。 「自分で自分を決めない」というのがモットー。つまり、いい加減に生きてるってこと。

1985年、三菱ミニカ・マスコットコンテスト最優秀賞受賞。和田加奈子『パッシング・スルー』でデビュー。
代表曲は、Wink『愛が止まらない』『淋しい熱帯魚』、やしきたかじん『東京』、新世紀エヴァンゲリオン主題歌『残酷な天使のテーゼ』など多数。著書には『夢の印税生活者』(講談社)、『あした理想の自分になるルール』(イースト・プレス)がある。
そのほかにもアーティストのプロデュースを手掛けたり、ミュージカルやアニメ、CMなどに詞を提供したり、エッセイを書いたり、チャレンジ精神旺盛と言うより節操がない。ただの強欲である